学会の告知手段としては、従来の紙媒体や学会誌・大学の掲示板といったアナログな手法に加え、近年ではSNSを活用する流れが加速しています。例えば、X(旧Twitter)やLinkedInを活用し、狙いたい研究者層や業界層へピンポイントで情報を届けることが可能です。
特に若手研究者や新しいトレンドに敏感な層はSNSによる情報収集が中心となっており、イベント情報を目にする機会を増やすことが参加者拡大につながります。また、SNS広告を使えば興味関心や職種などを絞り込んで発信できるため、余計なコストを抑えつつターゲットへの訴求力を高められます。
一度登録した参加希望者や過去参加者に対しても、SNS上でイベント情報を分割しながら段階的に発信していく方法が有効です。大きな発表や注目講演者の情報は後から公開する「ティザー戦略」を行うと、フォロワーの期待感を高めつつ申し込み数を伸ばすことができます。
学会の集客において、最も重要と言っても過言ではないのがプログラムの質です。興味を引く登壇者や、最新の研究成果・トレンドを網羅するセッション構成など、「この学会だからこそ得られる学び」を明確に打ち出すことで集客数は大きく変わります。
また、特別ゲストや著名な研究者を呼ぶ場合は「ここでしか聞けない内容」を強調し、イベント全体の価値を高めることができます。加えて、参加特典として講演資料を限定配布する、学会ならではのオリジナルグッズを提供するといった“特別感”を演出するのも効果的です。
集客を最大化するには、自学会だけでなく、周辺の専門家や組織との連携が重要です。大学や研究機関だけでなく、関連する企業や技術団体と協力し、協賛を募ることで活動資金や認知拡大のサポートを得られます。
また、業界誌や専門メディアに学会情報を掲載してもらう、あるいは他学会との合同告知を行うと、新たな研究者コミュニティにリーチできる可能性があります。もし大型の学会や展示会などで来場者の属性が重なる場合、あえて同時期・近隣会場で開催するという戦略も有力です。競合との“バッティング”を避けるだけでなく、「周辺学会からの誘客」を見込むことで参加者のすそ野を広げることができます。
ただし、その際はターゲットが重複しすぎてしまう懸念や、日程・場所の調整なども必要になります。事前に連携先との情報交換やスケジュール確認を行い、協力体制をしっかり築き上げることが大切です。
コロナ禍で大きく普及したオンライン開催は、学会においても「遠方参加者が増える」「参加のハードルが下がる」といったメリットをもたらしました。一方で、対面ならではの交流や臨場感を重視する参加者も少なくありません。そこで、両者のメリットを兼ね備えたハイブリッド開催が注目されています。
ハイブリッド型の学会では、遠方・海外の研究者や忙しい現場職の方もオンラインで参加しやすく、時間的・物理的な制約を減らすことができます。特に、医療系など週末しか動けない職種の方でも、オンライン参加を用意することで集客数を大きく伸ばせます。
一方で、リアル会場に足を運んでもらう価値をしっかりと作ることも重要です。開催地や会場選定の工夫、現地でしかできない体験型セッション、ネットワーキングイベントなど、対面の魅力を付加価値として打ち出すことで、オンラインとリアル双方の参加者満足度を高めることが可能になります。
SNSでの認知拡大は、今や学会や各種イベント集客において欠かせない手段になっています。X(旧Twitter)を使えば研究者や学生など幅広い層へリーチでき、LinkedInなら学術分野やビジネス関連の専門家に効率よく情報を届けられます。学会の開催目的や主なテーマに沿った専門性の高い情報を日常的に発信しておくと、「この学会では最新の知見が得られそうだ」というイメージが高まり、関心を持つ方のフォローや拡散につながりやすくなります。
開催内容をすべて一気に公開するのではなく、著名な登壇者の発表や特別セッションの詳細などを段階的に出していくと、参加予定者の期待感を徐々に高められます。XやLinkedInの広告機能を活用して興味・関心や地域、職種などを細かく設定すれば、限られた予算でもターゲット層へ効率的に訴求できます。
メールによる告知は、学会集客の基本施策として今も効果を発揮します。過去に参加した方の連絡先を一元管理し、学会の最新情報やプログラム概要などを段階的に案内すると、リピーターの獲得や口コミ拡散が期待できます。自学会だけでなく、協賛企業や関連学会からも告知メールを配信してもらえば、新たな見込み参加者にもアプローチしやすくなります。
登録開始時期から1か月前、2週間前、1週間前、3日前、前日など、複数回にわたりリマインドメールを送る方法も有効です。セグメント分けを行い、大学教員や企業研究者、学生など属性に合わせて内容を少し変えると、受け手にとってわかりやすく興味を持ちやすい案内になります。
学術分野でもオンライン検索で情報収集を行う方は多いため、学会公式サイトや告知ページのSEO対策も欠かせません。開催概要やプログラム内容を的確にまとめ、研究領域や学会名、さらに「オンライン参加」「ハイブリッド開催」などのキーワードを盛り込むと、参加意欲を持つ層に上位表示されやすくなります。
過去の開催レポートや論文発表集などを掲載しておくと、学会としての実績や専門性が伝わると同時に、検索エンジンからの評価も高まります。参加申し込みや問い合わせフォームへの導線をわかりやすく設計しておくと、集客効果がさらに高まります。
専門誌や学会誌、関連業界のポータルサイトなどは、学会に関心を持つ読者が集まりやすい媒体です。大学や研究機関、企業向けに強い影響力を持つ場合が多いため、紙媒体だけでなくウェブ版やメールマガジンに掲載してもらうことで幅広い層にアプローチできます。
協賛企業や後援団体がある場合は、そうした機関が運営するメディアで告知を行ってもらうと、一気に認知度が拡大する可能性があります。他の学会と日程が重なる場合は参加者を奪い合うリスクがあるため、あえて近い場所や同時期に開催することで誘客を狙うか、競合を回避するかを慎重に検討することが大切です。
著名な研究者や講演者が参加する学会の場合、その方の人脈やSNS発信によって集客が大きく伸びることがあります。登壇者が自身のフォロワーや研究コミュニティに告知してくれるだけで、学会の存在を知らなかった層へ直接リーチが可能になります。協賛企業がある場合は、その企業が持つ顧客データベースや社内外のネットワークから周知してもらう方法も有効です。
登壇者のプロフィールや実績、講演内容を早めに公開すると、「この人の講演だけは聞きたい」という明確なモチベーションにつながり、参加を後押しします。協賛や後援に関する情報も学会サイトでしっかり提示すると、イベントの信頼度が高まり、申し込みにつながりやすくなります。
研究成果の発表や学術情報の収集だけではなく、ネットワーキングや新たな共同研究のきっかけになる場でもあることを、運営側が積極的にアピールすると参加意欲が高まります。学会の公式サイトや告知文面では、「どんな課題を解決できるのか」「どのような新知見や人脈が得られるのか」を具体的に伝えることが重要です。
プログラムのタイトルや概要文に参加者が得られる価値を明示しておくと、学術的な興味だけでなく実務やキャリア面のメリットを感じてもらいやすくなります。特典として講演資料やオリジナルグッズを配布したり、会場内に交流スペースを設けたりするなど、学ぶだけでなく交流や体験ができる機会を用意しておくことも効果的です。
最終的に申し込みを決断してもらううえで、早期申込割引や学割など、参加費用に関するインセンティブは強い動機づけになります。開催時期が期末(3月や9月)などで参加者の予定が立てにくい場合は、特に早期申込を促すキャンペーンを打ち出すと効果的です。
「早めに申し込むほどお得」「学割適用で気軽に参加できる」といった訴求は、研究室単位や学生グループなどの申込数を増やすきっかけにもなります。限定〇名の特典付きプランや、著名な登壇者の書籍プレゼントなど、特別感を演出する方法も多くの学会で好評を得ています。
学会の集客を成功させるには、まず目的とターゲットを明確にし、魅力的なプログラムと情報発信を組み合わせることが大切です。SNSやメール配信を活用して認知を広げ、登壇者や協賛者のネットワークを頼りに参加意欲を高めましょう。
ハイブリッド開催など、多角的なアプローチで参加のハードルを下げることも重要です。参加者に対して「得られる価値」を具体的に示し、多くの研究者や学生が「行きたい」と思う学会を実現する第一歩となります。
学術大会の運用から、オンライン・オフラインを組み合わせたハイブリッド開催まで、幅広く対応した3社について学会の規模と目的別に紹介します。(2022年6月調査時点)