こちらの記事では、近年注目されている「DEI」について紹介していきます。このDEIはどのような視点なのか、そして各学会や委員会ではどのような取り組みを行っているのかという点について、実際の事例を取り上げながら紹介してきます。
DEIとは、「Diversity(多様性)」、「Equity(公正性)」。「Inclusion(包括性)」の頭文字をとったものであり、多様性を尊重し、公平性の意識を持ち、すべての人々を包摂する環境づくりを行う、という概念です。これまでは「D&I(ダイバーシティ&インクリュージョン)」という言葉が多く使われていたものの、現在では「Equity」を加えた「DEI」が一般的となっています。ここでは、学会が向き合うべきそれぞれの視点について見ていきましょう。
多様性は、個人や集団に存在するさまざまな違いを指します。例えば性別や国籍、障害の有無と言ったように表層の多様性だけではなく、専門性や経験、価値観といった深層の多様性も指しており、このような多様性を尊重します。
公平性とは、公平な扱いや不均衡の調整を行うことを意味しています。ひとりひとりの状況に応じ、情報や機会、リソースへのアクセスについて公平に提供することを指しています。
包括性とは、それぞれの多様性が認められ、誰もが組織に貢献できることを意味しています。人々が対等に関わり合いながら組織に参加できる環境づくりやマネジメントを行い、多様性を強みとすることを指しています。
ここでは、各学会や委員会などで取り組みが行われているDEIの事例について紹介します。それぞれがどのような取り組みを行っているのかを見ていきます。
土木学会では、2004年にジェンダー問題検討特別小委員会が設置され、2006年には男女共同参画小委員会、2010年にはダイバーシティ推進小委員会と名称を変更しながら活動を行ってきました。その後2014年には教育企画部門の独立した委員会に昇格してダイバーシティ推進委員会となり、2020年にダイバーシティ・アンド・インクルージョン推進委員会(D&I推進委員会)に、2025年にはDEI委員会と名称変更を行っています。
その中で、2015年5月には土木界におけるダイバーシティ推進に関する「土木学会ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)行動宣言」を策定。そして2025年5月には「D&I行動宣言」を見直した「土木学会DEI行動宣言」を策定しています。
参照元:土木学会 DEI委員会公式HP
(https://committees.jsce.or.jp/diversity/)
日本物理学会では、2007年に男女共同参加推進委員会を設立し、2023年1月にはさらに幅広い問題に取り組むために名称をダイバーシティ推進委員会に改めています。
同委員会では男女平等参画及びダイバーシティの推進のために、「ダイバーシティ推進についての議論と活動」「女性研究者を含めた次世代人材の育成」「実態調査と環境整備」に取り組んでいます。例えば、学会内の活動に加えて、女子中高生・大学生に向けたアウトリーチ活動への協力や、男女共同参画学協会を通じた政府や社会への働きかけなど、国内外において多彩な活動を行っています。
参照元:一般社団法人日本物理学会公式HP
(https://www.jps.or.jp/activities/iinkai/dei/about.php)
周産期・新生児医学会では、「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)推進委員会」を設置しています。これは会員の多様性を認め、事業に自発的に参加しやすいよう、ひとりひとりに適した環境の整備を行うため、そして学会の発展のために活躍ができるような機会を提供することを目的としています。
こちらの委員会では、例えば学術集会時の委員会企画検討・実施やカフェなどのシンポジウムの企画や運営、評議員選挙への女性医師立候補者および女性役員の増加の促進、会員に向けたアンケートの実施・学術集会などにおける結果発表・論文化による結果の公開などといったように、さまざまな取り組みを行っています。
参照元:周産期・新生児医学会公式HP
(https://www.jspnm.jp/modules/about/index.php?content_id=34)
こちらの記事では、それぞれの学会が向き合うべきDEIという3つの視点について解説してきました。DEIは「Diversity(多様性)」、「Equity(公正性)」、「Inclusion(包括性)」の頭文字をとった言葉であり、事例にてご紹介したとおり、さまざまな学会や委員会においてその推進に取り組んでいる状況となっています。このように、多様性や公平性を尊重することが、多様な人材の定着や活躍に向けた環境づくりにつながっていくといえます。
学術大会の運用から、オンライン・オフラインを組み合わせたハイブリッド開催まで、幅広く対応した3社について学会の規模と目的別に紹介します。(2022年6月調査時点)