近年、学会運営においても持続可能性への配慮が求められています。特に、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みは、さまざまな分野で加速しており、学術界も例外ではありません。学会は、研究者が知識を共有し、新たな発見を促進する場であると同時に、社会的責任を果たす重要な機会でもあります。
学会運営において環境負荷を低減することは、多くの利点をもたらします。まず、学会を持続的に開催するためには、限りある資源を有効に活用することが不可欠です。環境に負荷をかけ続ける運営を行えば、長期的にはその影響が学会運営自体の継続性を脅かす可能性もあります。そのため、持続可能な方法を導入することは、学会の将来を守ることにもつながります。
また、環境配慮型の運営は、学会の社会的評価を高める要因にもなります。近年、企業や団体においても環境負荷低減への取り組みが重視されており、学会がこうした流れに対応することで、参加者や協賛企業の信頼を得ることができます。特に、環境意識の高い研究者や機関との連携が強まり、学会の影響力を広げることにもつながるでしょう。
さらに、環境負荷の低減は新たな可能性を生み出します。たとえば、ペーパーレス化を進めることで、デジタルプラットフォームの活用が促進され、よりインタラクティブな学術交流の場が生まれるかもしれません。オンライン開催の選択肢が広がることで、海外からの参加者が増え、学会のグローバル化も進む可能性があります。
学会運営においてペーパーレス化を推進することは、環境負荷の低減に大きく貢献します。従来、学会ではプログラム冊子や講演要旨集、ポスター資料など、多くの紙媒体が使用されてきました。しかし、これらをデジタル化することで、紙資源の消費を大幅に削減することが可能です。
電子プログラムやウェブサイトを活用し、参加者が自身のデバイスで必要な情報を閲覧できるようにすることで、利便性も向上します。また、学会専用のアプリを導入すれば、リアルタイムでプログラムの更新が可能になり、急な変更にも対応しやすくなります。これにより、紙媒体の印刷コストを削減できるだけでなく、参加者にとっても最新情報を手軽に得られるメリットがあります。
学会開催時の環境負荷を抑えるためには、会場選定が重要なポイントになります。公共交通機関でアクセスしやすい会場を選ぶことで、参加者の自家用車利用を減らし、CO₂排出の削減につなげることができます。
また、オンライン参加の選択肢を提供することで、移動そのものを削減することも可能です。特に国際学会では、航空機による移動が環境に与える影響が大きいため、ハイブリッド開催を導入することで、物理的な移動を最小限に抑えつつ、多くの研究者が参加できる環境を整えることができます。
学会運営において発生する廃棄物の削減も、持続可能な運営を実現するための重要な施策の一つです。使い捨ての紙コップやプラスチック容器の使用を避け、再利用可能な食器やタンブラーの導入を促進することが求められます。
また、会場内にリサイクルステーションを設置し、廃棄物を適切に分別できる仕組みを整えることで、リサイクル率を向上させることが可能です。参加者にも事前に環境配慮型の取り組みを周知し、積極的な協力を呼びかけることで、より効果的な対策が実現できます。
学会の開催において使用されるエネルギーの効率化も、環境負荷の低減につながる重要なポイントです。会場の照明や空調設備を省エネルギー型のものに変更することで、消費電力を抑えることができます。
さらに、再生可能エネルギーを活用することも有効です。会場が太陽光発電や風力発電を導入している場合、こうした施設を優先的に選ぶことで、学会のカーボンフットプリントを削減することが可能になります。加えて、セッションの合間に照明を適宜調整するなど、細かなエネルギー管理を行うことも効果的です。
学会運営において使用する物品や提供されるサービスも、持続可能性を考慮したものを選択することが重要です。ノベルティや記念品には、環境に配慮した素材を使用した製品を選ぶことが望まれます。例えば、再生紙を使用したメモ帳や、リサイクル素材を活用したバッグなどが挙げられます。
また、学会のケータリングサービスにおいても、地元の食材を使用したメニューを取り入れることで、輸送に伴う環境負荷を軽減できます。さらに、ベジタリアンやヴィーガン向けの選択肢を増やすことで、食品ロスの削減にも貢献できるでしょう。
持続可能な学会運営を実現するためには、これらの取り組みを組み合わせ、具体的な施策を継続的に改善していくことが求められます。
持続可能な学会運営を実現するためには、まず明確な目標を設定することが重要です。サステナビリティ対策には短期的な施策と長期的なビジョンが必要であり、それらを具体的な数値目標や行動指針に落とし込むことで、組織全体での取り組みが進めやすくなります。
たとえば、「紙の使用量を前年比50%削減する」「学会参加者のうち70%以上が公共交通機関を利用する」「リサイクル率を90%以上にする」といった明確な目標を設定することで、関係者の意識が高まり、実行力が向上します。
また、目標を達成するためには、学会運営チーム内での役割分担が不可欠です。サステナビリティ委員会を設置し、環境対策や資源管理、啓発活動などのテーマごとに担当者を決めることで、効率的に施策を進めることができます。定期的な進捗確認や報告の場を設けることで、対策の見直しや改善点の共有がスムーズに行えます。
学会のサステナビリティ施策を成功させるためには、運営側の努力だけでなく、参加者の協力も欠かせません。そのためには、事前の周知と情報共有が重要になります。
学会のウェブサイトやSNS、ニュースレターなどを活用し、サステナビリティに関する方針や具体的な取り組みを発信することで、参加者の意識を高めることができます。また、申し込み時に「ペーパーレス推進のため、電子プログラムの利用にご協力ください」「マイボトルの持参を推奨しています」といったメッセージを送ることで、事前に協力を促すことが可能です。
さらに、学会当日には、エコフレンドリーな取り組みを促進するためのポスターやデジタルサイネージを活用し、会場内での意識向上を図ります。分別ゴミ箱の設置や、再利用可能な資料の提供など、参加者が自然と持続可能な行動を取れる環境を整えることも大切です。
また、参加者自身が学会のサステナビリティ活動に貢献できるよう、例えば「エコ活動チェックリスト」の配布や、環境に優しい行動を取った人へのインセンティブを設けるといった工夫も有効です。これにより、学会全体が一体となってサステナビリティ推進に取り組む姿勢を示すことができます。
サステナビリティを意識した学会運営は、環境負荷を軽減するだけでなく、学会の価値を高め、社会的責任を果たす機会にもなります。明確な目標設定と適切な役割分担、事前の情報共有を徹底することで、運営側と参加者が一体となった取り組みが可能になります。学会は知識の共有の場であると同時に、未来に向けた責任を担う存在です。持続可能な方法を選択し、より良い社会の実現に貢献していきましょう。
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